COLUMN

フェムテックと鍼灸

フェムテックと鍼灸 vol.3フェムテックの実態~現状と課題~

2022年07月15日
フェムテックと鍼灸

こんにちは。

グラン治療院の統括院長、鍼灸師の栗本夏帆です。

 

鍼灸師や治療院が、悩みを抱えている方と病院との架け橋のような存在になっていけたら……

という想いを持って、【フェムテックと鍼灸】のコラムを書き始めました。

 

vol.1~2もあわせて読んでいただけますと嬉しいです。

●vol.1フェムテックについての私の想い
●vol.2そもそもフェムテックって何?

 

vol.3となる今回は、2021年6月2日に開催された『第7回Femtech振興議員連盟 総会』で発表された、
フェムテックの実態についての調査結果について触れていきたいと思います。
その調査で分かったのは、健康課題の現状と課題。そして、フェムテック商品とサービスについてです。

 

vol.2でもお伝えした、健康課題分類の順番にお話ししていきます。
また、鍼灸がどのように関わっていけるのかについても、読んでいただければと思います。

健康課題分野(フェムテック適応分野)は以下6つに分類

  • 月経
  • 妊娠・不妊
  • 産後ケ
  • 更年期
  • 婦人科系疾患
  • セクシャルウェルネス

 

各分野を健康課題と、それらを解決へと導くためのフェムテック製品・サービスに分けてまとめました。
『第7回Femtech振興議員連盟 総会』の資料を基に、私自身が感じたことも踏まえてお伝えします。
 

月経

現状・課題
月経に伴う月経痛やPMS(月経前症候群)については、15歳から49歳までの女性のうち、月経経験者の約97%がつらい症状を経験しているとのことでした。
そして、18歳から49歳までの働く女性の94%は月経に関連した症状によって、仕事のパフォーマンスに影響があると答えており、
さらに45%の人はパフォーマンスが半分以下になると回答しています。

これらを換算すると、日本国内の1年間の労働損失は約4,900憶円にのぼるという調査もあるものの、
症状があったとしても何も対処していない人が多いことも浮き彫りになりました。
PMSに効果がある低用量ピルの服用率も低く、生理休暇の取得者も少ないというのが実態のようです。

 

フェムテック製品・サービス
月経分野におけるフェムテックは意外と歴史が長く、日本では月経周期管理アプリケーションは20年以上前から存在していました。
最近では、PMSや月経痛を緩和する低用量ピルのオンライン処方サービスも登場しています。

また、これまでアナログで行っていた基礎体温などの記録も、アプリ上で電子データ化が行えるようになり、
医療機関での利用を可能にするサービスも開始されています。

海外でも、過去のデータに基づきPMSを予測するアプリなど、月経周期管理アプリケーションが多く提供されていますし、
ピルのオンライン処方、サブスクリプションの配達サービスなども存在しています。

 

妊娠・不妊

現状・課題
日本では、出生数の低下、出産の高齢化が進んでいます。
2019年の出生数は86.5万人、35歳以上で第1子を出産する女性の割合は21.1%だったことが分かっています。

高齢出産は、母体と胎児に多くのリスクがあるうえ、年齢が上がるにつれ、妊娠が難しくなるとも考えられているんです。

不妊治療を受けている夫婦は、約5.5組に1組と言われており、2018年には新生児の約16人に1人が生殖補助医療によって誕生しています。
その一方で、不妊治療と仕事との両立ができず、不妊治療経験者の23%が離職、10%が雇用形態を変更。さらには、10%は不妊治療を断念している現実があります。
 
フェムテック製品・サービス
オンラインコミュニケーションアプリを利用して、不妊に悩む人をサポートする遠隔健康医療相談をはじめ、
利用者が入力した月経周期やホルモン値などのデータを基にして、類似した不妊治療の成功者のデータを参照できるサービスなどがあります。

また、不妊の可能性を自宅で簡易的にチェックできる、卵巣年齢や精子の運動率を確認できる簡易検査キットも登場しています。

妊娠においての製品としては、妊婦や胎児の状態を遠隔でモニタリングする医療機器、将来の妊娠のための卵子凍結サービスの提供もあります。

海外では、おりものや唾液を測定することで妊娠可能期間を予測するデバイスが販売されているそうです。
 

産後ケア

現状・課題
少しシリアスな話になるのですが、妊娠中および産後1年未満に死亡した女性の死因は自殺が最多。
2015年~2016年の2年間で92人にものぼり、産後うつは深刻な社会課題になっています。

妊娠中では、全妊婦の約10%、産後1年未満では10~15%程度のうつ症状が認められているそうです。
うつ病好発時期(季節によって発症しやすい時期がある)には、うつ病の症状とリスク因子をスクリーニングして、
適切なケアを提供する必要があるとされています。

産後うつ予防の観点からは、2017年4月から産婦健康診査2回分にかかる費用を助成する『産婦健康診査事業』が各市町村で開始されています。
2021年4月からは『産後ケア事業』の努力義務が課せられるようにもなりました。

 

フェムテック・サービス
オンラインで行う、遠隔健康医療相談サービスがあります。
メリットとしては、「乳幼児を連れて移動しなくて済む」「感染症のリスクがない」「気軽に相談できる」などの声が挙がっているそうです。

海外では、家事や仕事で忙しい女性が搾乳の時間を有効活用できるようと、
従来の搾乳機をワイヤレスにしたり、小型化したウェアラブル搾乳機が販売されたりしています。

 

更年期

現状・課題
閉経前5年間と閉経後5年間を合わせた10年間を更年期と呼びます。
その代表的な症状は、のぼせやほてり、発汗などのホットフラッシュ。気分の落ち込みやイライラなどの精神症状も現れます。

2018年の調査では、更年期症状があると自覚している40歳以上の女性のうち95%が仕事のパフォーマンスに影響があると答えており、
そのうちの46%が仕事のパフォーマンスが半分以下になると感じているようです。
中には、更年期症状により、契約の更新を辞退した人が約50%、退職したことがある人は約17%にのぼるものの、
症状があったとしても何も対処していない人が多いことも分かっています。

 

フェムテック・サービス
更年期症状について相談ができる遠隔健康医療相談や、更年期症状で悩む夫婦やカップルのコミュニケーションサポートサービスがあります。
従来のホルモン治療薬や漢方薬とは異なる対処方法として、サプリメントが提供されるケースもあるそうです。

また海外では、更年期に特化したオンラインクリニック、非ホルモン治療薬、更年期症状によるホットフラッシュを緩和するウェアラブルデバイスなどもあります。

 

婦人科系疾患

現状・課題
乳がんは年間約33万人の女性が発症し、9人に1人の割合でガンだと診断されます。
死亡者数は年々増加傾向にあるものの、検診受診率は50~69歳の女性で約40%にとどまっているようです。

また、毎年約1万人の女性が発症していると言われている子宮頸ガンは、早期発見が可能と言われていますが、20~69歳の女性の検診受診率は約40%程度。

さらに、不妊症の原因になると言われている子宮内膜症の患者数は、260万人以上いると推定されているものの、実際に医療機関を受診しているのは年間で約6.7万人。
つまり、症状があっても婦人科を受診しない人が多いという結果になっています。

 

フェムテック・サービス
テクノロジーの進歩によって、女性視点の医療機器製品が開発され始めています。
従来、診査や検診は痛みがあっても仕方がないと考えられてきましたが、女性の身体に配慮し、痛みが少ない医療機器も開発されています。

海外では、子宮系疾患のタンポン型の検査キットや、乳ガンを検知するIoTブラジャーなどが登場しているそうです。

 

セクシャルウェルネス

現状・課題
世界保健機構(WHO)では、“セクシュアリティに関連する身体的、感情的、精神的、社会的幸福の状態である”と定義づけられています。

他の分野と比較すると、学術論文、調査などの入手可能な情報が乏しい点が課題として挙げられるものの、
近年では女性が女性に向けての製品やサービスを考案・開発する動きが活発になっています。

女性のセクシャルウェルネスはもっとオープンになるべきであるという発信、女性自身の価値観の変化もあり、
セクシャルウェルネス分野のタブー視は徐々になくなってきています。

 

フェムテック・サービス
これまでも女性用バイブレータや性交痛を軽減する潤滑ジェルなどの製品がありましたが、
近年では科学研究を基に、女性のエンジニアがデザインする製品、女性の性交痛を軽減するための緩衝リングなど、女性視点で作られた製品が増え始めています。

海外はもっと進化していて、遠隔セクシャルコミュニケーションなどの最先端サービスの提供も行われているようです。
 

 
以上が『第7回Femtech振興議員連盟 総会』で発表された内容です。
読んでみて、どのように感じましたか?

 

私は、「サービスの部分に、なぜ鍼灸が入ってこないのかな」と思いました。
その一方で、フェムテックの領域において鍼灸が力になれることを知らない方が、まだまだ多いという現状も分かりました。
もちろん、鍼灸師である私たちが知らない製品やサービスもたくさんあると思います。

 

大切なのは、まずは知ることから。
現状と課題を知り、お悩みを持って来院してくださる方へ少しでも情報提供が行えるように、最新の知識と情報を常にアップデートしていきましょうね。

 

次回は、どんなフェムテック製品やサービスがあるのか、具体的にご紹介していきます。

参考:『第7回Femtech振興議員連盟 総会』資料

私が書きました!

栗本 夏帆KAHO KURIMOTO

鍼灸師

所属:グラン治療院東京院
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