多くの人を悩ませる肩こりや腰痛。
国民生活基礎調査(平成28年 厚生労働省)では、男女ともに自覚症状のある悩みとして、肩こり・腰痛が上位(肩こり:女性1位、男性2位 腰痛:男性1位、女性2位)を占めています。(参考資料参照)

肩こりは約12人に1人、腰痛は約10人に1人


人間の身体は、脳の発達や直立歩行などの進化を遂げてきた一方、曲げたりひねったりといった大きな動作を可能にするため、骨格から見ても頚や肩、腰に負担がかかりやすい構造となっています。また、仕事や日常生活に欠かせない存在となったPC・スマホ機器の使用や同じ姿勢での作業、日々のストレスなどで肩こりや腰痛を引き起こしやすくなっています。

人間の頭の重さは平均4~5キロといわれており、アメリカのニューヨーク市の脊椎専門のクリニック、ケネス ハンスラージ氏の研究発表(Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head. Hansraj KK. Surg Technol Int. 2014 Nov;25:277-9.)によると、頭を前に傾けていく角度が増すにつれ、頚の負荷が強くなっていることが明らかとなりました。(0度の場合、4~5kg、15度の前かがみで12kg、30度で18kg、45度で22kg、60度では27kgにもなる。)

このことからも分かるようにPCやスマホなどの画面を見る姿勢、下を向きながら行う作業等は、頚や肩に大きな負担を与えます。そして、日々、長時間おこなう事で筋肉の緊張が高まり、血流も悪くなる事で凝りや痛みとなって現れます。

また、立ち姿勢(立位)を100%とした時、他の姿勢での椎間板にかかる圧力をはかった実験データ(Nachemson A :The lumbar spain.An orthopaedic challenge.Spain 1:59-71,1976)では、椅子に座る姿勢や腰を曲げた姿勢をすると椎間板に圧力が大きくかかってきます。
そして、大腰筋の発達によって二足歩行を可能にしたと言っても過言ではない筋肉。この重要な大腰筋とは背骨と股関節をつなげている筋肉で上半身と下半身をつなげています。長時間の座位が続くとこの筋肉が短縮して固まってしまい股関節が伸びにくく、立ち上がる際に腰が引っ張られて腰痛が出現するケースも多いのです。

東洋医学からみた肩こりや腰痛

東洋医学では、症状の原因を考える際に欠かせない概念として「気・血・水(津液)」の考えがあります。

  • 「気」・・・生きるために必要な生命力の源。全身をめぐる目に見えないエネルギー。
  • 生命活動に必要なエネルギーであり、目で見えない無形の存在である。血や水といった有形の要素と結びつく事によって力を発揮し、全身をくまなく巡っている。

  • 「血」・・・全身に栄養を巡らせ、各器官を潤す。体内で出来た熱エネルギーも運ぶ。
  • 血液とほぼ同じ意味ではあるが、血液循環なども含めた広い概念がある。血の大きな作用として、全身に酸素や栄養を与え、筋肉や皮膚などの器官に潤いを与えるとともに、体内で生み出された熱エネルギーを運ぶ働きがある。

  • 「水」・・・血以外の水分。皮膚や粘膜を潤し、汗や尿となって老廃物も排泄する。
  • 津液とも呼ばれる。津液は「津」と「液」に分けられ、「津」はサラサラとした体表部を巡り、「液」は深層部を巡る。津液の働きは、身体のほてりを鎮め、皮膚や口・鼻などの粘膜を潤し、涙や鼻水となって異物を体外へ排出する。また、汗となって余分な熱や老廃物の排泄なども行う。水分を媒介することで「気・血」の機能も支えている。

    東洋医学からみた代表的な肩こりや腰痛

    気滞タイプ

    日々のストレスや緊張によって気が停滞し引き起こされる。気滞による肩こり、腰痛は、気分転換に自然に囲まれた公園や森の中を歩くなどの運動や肩を動かすことで改善しやすくなる。

    瘀血タイプ

    血の巡りが悪くなり、滞ることで現れる。同じ姿勢で長時間いるデスクワークなどで起きやすい。また、普段の運動不足や食生活の乱れ、冷えやストレスなども瘀血を引き起こす。

    痰湿タイプ

    水分の過剰摂取で水の流れが停滞し現れる。雨天時に悪化しやすく、頚や肩が重だるく冷える。温めると痛みが軽減する。
     

    腎虚タイプ

    生命活動の原動力を提供している腎が弱っている状態。老化や長期にわたり過労、睡眠不足が続くと腎のエネルギーが不足し、下半身の冷え、腰痛、めまい、耳鳴りなどが現れる。

    参考資料



    (図1 性・年齢階級別にみた症状別自覚症状のある者(有訴者)率(人口千対)の順位
    Grade of rate of persons with subjective symptoms by type, sex and age group (per 1,000 population 平成28年 厚生労働省 国民生活基礎調査 参照)