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睡眠薬の種類と漢方薬の違いとは?

2023年08月17日
睡眠

皆さんの中には、仕事のストレスや家庭の問題、心配事など、さまざまな理由で眠りにつけないという状況を、多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

また、睡眠薬に頼っている方も少なくないかもしれません。睡眠薬にはさまざまな種類があり、適切な使い方が重要です。

今回のコラムでは、睡眠薬の種類と、眠れないときに使われる漢方薬の違いについて説明していきたいと思います。

 

睡眠薬と漢方薬の特徴

睡眠薬は、直接的に眠りを誘発する働きを持つ特徴があります。脳の覚醒を抑えることで、眠気を感じさせたり鎮静作用をもたらすことがあります。

一方、漢方薬は不眠の原因を取り除く働きをして、自然な形で睡眠を促します。たとえば、イライラして眠れない場合には、気分を落ち着かせる漢方薬が選ばれ、不眠の背後にある要因を考慮した薬が選ばれます。

 

代表的な不眠症の4タイプ

 

不眠症には様々ある為、医師の診断を受け不眠症に合わせた睡眠薬を使用することはもちろんですが、自分自身でも薬に対する正しい知識を身に付けることも大切です。

 

睡眠薬の作用とメカニズム

睡眠薬は、作用の仕組みに基づいて大きく2つに分けられます。「脳の機能を低下させる」タイプと「自然な眠気を強くする」タイプです。

最初に、「脳の機能を低下させる」タイプの睡眠薬について説明します。

ベンゾジアゼピン系(BZD)、非ベンゾジアゼピン系(非BZD)、そしてバルビツール酸系などが含まれます。

ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系では、GABA(γ-アミノ酪酸)という神経伝達物質の働きを強めることで、催眠作用を引き起こします。

GABAは神経細胞の興奮を抑え、α波を促進しリラックスをもたらす作用があります。

 

一方、バルビツール酸系は、脳の大脳皮質や脳幹に影響を及ぼし、脳の覚醒を抑制することで眠気や鎮静作用が現れます。

ただし、これらの薬は睡眠薬の作用が翌日にも残り、日中に眠気や倦怠感を引き起こす「持ち越し効果」があります。

また、長期間の使用では薬の効果が薄れ、次第に服用量が増えることがあり、減量や中止を試みる際に離脱症状が生じて眠れなくなる可能性があるため、「依存性」の問題も浮上します。

 

 

ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の違い

ベンゾジアゼピンには「ω1」と「ω2」という2つのω受容体が存在します。

「ω1」は小脳や大脳新皮質で催眠作用が強く、一方「ω2」は脊髄での抗不安や抗けいれん、筋肉の弛緩作用に関与しています。

ベンゾジアゼピン系は「ω1」と「ω2」の両方の受容体に作用するのに対し、非ベンゾジアゼピン系は主に「ω2」にほとんど影響を及ぼさず、催眠効果のみを持つシンプルな睡眠薬として働きます。

ベンゾジアゼピン系は効果が素早く現れ、心地よい落ち着きが感じられ、肩こりの緩和なども期待できますが、筋肉の緩みが強いため、ふらつきや転倒などの副作用が起こる可能性があります。

 

ベンゾジアゼピン系

→催眠と筋弛緩作用で緊張の強い神経症的な不眠に効果的で即効性あり

超短時間型:ハルシオン

短時間型:レンドルミン・デパス・サイレース

中間型:ユーロジン・ベンザリン

長時間型:ドラール

 

非ベンゾジアゼピン系

→副作用や相互性が少ない。服用後の転倒リスクが少なく、飲み合わせの悪い薬も少ない

超短時間型:マイスリ―・ルネスタ・アモバン

(*現在の日本において、不眠症の薬物療法の主流になっているのは、即効性があり強力なベンゾジアゼピン系の睡眠薬であり、処方量は睡眠薬全体の約80%と言われている。)

 

自然な眠気を高める睡眠薬

自然な眠気を高める睡眠薬には、二つのタイプがあります。

ひとつはメラトニン受容体作動薬で、これはメラトニンの分泌を助けて自然な眠気を促します。

もうひとつはオレキシン受容体拮抗薬で、これは覚醒状態を引き起こすオレキシンの働きを遮断し、睡眠状態に切り替えます。

 

メラトニン受容体拮抗薬には、ロゼレムやメラトベルといった睡眠薬があります。これらはメラトニンの受容体に作用して睡眠を調整します。

オレキシン受容体拮抗薬には、ベルソムラやデエビゴといった睡眠薬があります。これらはオレキシンの受容体をブロックすることで、覚醒状態から睡眠へと移行させます。

 

 

漢方薬

漢方の考え方には、「気・血・水」という大切な概念が含まれています。これら3つが調和している状態では、私たちの体は心身ともに健康であるとされています。

漢方の視点では、不眠の状態は「気(生命活動に必要なエネルギー)」の流れが円滑でないことが一因とされており、体内の「気」の流れが滞ることや、「血」の量が過少または過剰になることも、不眠などの不調を引き起こす可能性があるとされています。

たとえば、気の流れが滞って眠れない場合には、「気」の流れをスムーズにする漢方薬が選択されます。また、イライラして眠れない人には気分を落ち着かせる漢方薬、「血」が不足し不安などの症状がある場合は、消化器のはたらきを助けることで、不足した「血」を改善させる漢方薬といったように不眠の原因となっている背景を考慮して、個々の状態に合った漢方薬が選ばれます。

 

不眠治療に用いられる漢方薬の例

桂枝加竜骨牡蠣湯(心因性 虚証)

不安や緊張でなかなか寝付けない人。「気」の巡りをよくし、神経過敏になり興奮した状態を整える。

 

加味帰脾湯(精神不安 神経症)

疲れやすく眠りが浅い人に選ばれることが多い漢方。

消化器のはたらきを助けることで、不足した「血」を改善する。不安や緊張を取り除き、気持ちを落ち着かせる。

 

酸棗仁湯(中途覚醒・熟眠困難)

夜間に目が冴えてしまう、眠りが浅く夢をよく見る、熟睡できないなどの症状の改善に用いられる漢方。
体力が低下して心身ともに疲労している人に用いる。また、働きすぎなどにより心身が軽い興奮状態になる場合(疲れているのに興奮状態で眠れない場合)の不眠におススメ。入眠がスムーズにできないタイプの不眠には効果は薄いとされる。

 

加味逍遙散(中途覚醒・早朝覚醒・熟眠困難)

女性特有の症状で眠れないときに選ばれる漢方薬。

「血」が不足し、たまった「気」が熱に代わり、さまざまな不快な症状を引き起こす。

これらの熱を冷まし不足した「血」を補い、「気」を巡らせて体のバランスを整えていく。

中高年女性のイライラやのぼせなどの神経症状を落ち着かせる事ができる。

 

この他にも体質に併せて選ばれる漢方薬も変わっていきますが、薬局やドラッグストアでも販売されていますので、睡眠でお悩みの際には薬剤師さんや医薬品登録販売者の方に相談してみてください。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

不眠症は鍼灸治療も有効な手段の一つです。

専門的な知識でしっかりと対応いたしますので、お悩みの際には是非ご相談くださいませ。

 

 

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私が書きました!

川﨑 真澄MASUMI KAWASAKI

鍼灸師

所属:グラン治療院横浜スパイアス院
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