はじめに
季節が変わると肌の調子や気分だけでなく、「舌」にも変化が現れます。
東洋医学では、春・長夏(土用)・夏・秋・冬をそれぞれ 五行(木・火・土・金・水)と臓腑(肝・心・脾・肺・腎) に対応させ、季節に応じて気血水の流れ方が変わると考えます。
鏡の前で自分の舌を観察すれば、季節のバランスの崩れがひと目で分かることも。
ここでは、季節別に「舌の変化」「体質サイン」「食材とツボのケア」をまとめます。
🌱 春 ― 肝の季節「めぐりの舌」
五行:木 臓腑:肝・胆
春は「気(エネルギー)」が上昇し、体も心も活動的になる時期。
しかし、気が滞るとイライラ・肩こり・生理不順など“肝の不調”が出やすくなります。
舌のサイン
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舌の縁が赤い(肝の熱)
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舌のふちに歯形(気滞+水滞)
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舌苔が薄白でやや湿り(湿のサイン)
体質傾向
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ストレス・気滞タイプ
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春先の眠気・めまい・目の充血など
ケア法
食材: しそ・セロリ・三つ葉・柑橘・黒豆・菊花・ミント
ツボ:
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太衝(足の甲の親指と人差し指の間)…肝のめぐりを整える
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合谷(手の甲の親指と人差し指の間)…気の巡りを促す。
生活法: 深呼吸・ストレッチ・朝の光を浴びてリズムを整える
☔ 長夏(土用) ― 脾の季節「湿の舌」
五行:土 臓腑:脾・胃
梅雨〜夏の終わりにかけての「長夏」は、湿気が多く胃腸に負担がかかる季節。
だるさ・食欲不振・むくみ・頭重感など、“湿邪”による不調が増えます。
舌のサイン
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舌全体がやや腫れぼったい(脾虚・水滞)
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舌の縁に歯形(脾の弱り)
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舌苔が厚く、白〜黄色っぽい(湿熱)
体質傾向
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胃腸が弱い、疲れやすい
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食後に眠くなる・重だるい・口内ねばつき
ケアのポイント
薬膳食材: はと麦・とうもろこしのひげ茶・小豆・冬瓜・山芋・生姜・黒豆
ツボ:
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足三里…胃腸を整える万能ツボ
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陰陵泉…水分代謝を改善
生活法:冷たい飲食を控える/湿気の多い日は軽く汗をかく運動/食後に温かいお茶を
☀️ 夏 ― 心の季節「赤舌の熱バランス」
五行:火 臓腑:心・小腸
陽気が最も盛んになる時期で、心(しん)の働きが高まります。
汗や睡眠リズムに乱れが出やすく、“熱”や“火”のサインが舌に表れます。
舌のサイン
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舌全体が赤い、または先端が赤い(心熱)
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舌苔が黄色または薄く乾く(熱+津液不足)
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舌のひび割れ(体液不足・陰虚)
体質傾向
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不眠・動悸・ほてり・口の渇き
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夏バテ・集中力の低下
ケア法
食材: 苦瓜・トマト・ゴーヤ・スイカ・緑豆・れんこん・蓮の実・ハス茶
ツボ:
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神門(手首の小指側、くぼみ)…心を落ち着ける
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少海(肘内側の小指側のくぼみ)…余分な熱を冷ます
生活法:夜更かしを避ける/昼寝は短時間/冷たい飲食物の摂りすぎに注意
🍂 秋 ― 肺の季節「潤いの舌」
五行:金 臓腑:肺・大腸
乾燥が進み、“潤い”の不足=津液の消耗が舌にも現れます。
免疫機能の低下や咳、肌荒れ、便秘などが出やすくなる季節です。
舌のサイン
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舌がやや乾き、色が淡く白っぽい
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舌苔が薄い・剥がれやすい
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舌の表面にひび・亀裂(陰虚)
体質傾向
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乾燥体質・潤い不足タイプ
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咳・喉の渇き・便秘・肌荒れ
ケア法
食材: 白きくらげ・梨・れんこん・百合根・杏仁・大根・山芋
ツボ:
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尺沢(肘の内側、親指側のくぼみ)…肺の熱・咳に
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列缺(手首内側、親指側の少し上)…呼吸器系の潤いを補う
生活法:加湿器・白湯で潤い補給/辛味(唐辛子・にんにく)は控えめに
❄️ 冬 ― 腎の季節「生命力の舌」
五行:水 臓腑:腎・膀胱
エネルギーを“蓄える”季節。腎の働きが弱ると冷え・腰痛・むくみなどが出やすくなります。
舌は血流低下や寒さによる変化が反映されます。
舌のサイン
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舌全体が淡い(陽気不足)
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舌苔が白く厚い(寒湿)
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舌裏の血管が暗紫色(瘀血)
体質傾向
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冷え性・むくみ・疲れやすい
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腰や膝の痛み・夜間頻尿
ケア法
食材: 黒ごま・黒豆・山芋・くるみ・羊肉・にんにく・生姜・栗
ツボ:
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命門(腰の中央、背骨の上)…体を温める根本のツボ
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湧泉(足裏の中央)…生命エネルギーを高める
生活法:下半身を冷やさない/早寝早起きでエネルギーを蓄える/黒い食材で腎を補う
🌗 おわりに
季節によって、舌の「色・形・苔」は少しずつ変化します。
日々の舌チェックを通して、体が発する“季節の声”を感じてみましょう。
春はめぐりを整え、長夏は湿を祓い、夏は熱を冷まし、秋は潤いを守り、冬は温めて養う。
舌を通じて、自分の体を五季のリズムに調和させる――それが東洋医学の「未病養生」です。
― 舌が教えてくれる季節のメッセージに耳を傾け、からだをやさしくチューニングしていきましょう。

