老化予防に抗糖化
- 2019年12月21日
- 肌のこと
グラン治療院の美容鍼灸は「健康の上に美は成り立つ」を念頭に身体の鍼灸治療も同時に行っております。
鍼灸は創傷治癒という身体を治そうとする働きを高める施術を得意とするものですが、元々備わっている治癒能力が弱いと回復が遅いので、美容鍼灸や鍼灸治療を行っても効果が出にくい傾向があります。
より鍼灸の効果を上げるため、普段の生活習慣において皆さんにも少しだけ意識、改善して頂きたいと思います。今回は身体の老化に深く関係する「糖化」についてお話させて頂きます。
体の焦げ
まず、美容において「酸化」という言葉はよく聞くと思いますが、体の「糖化」という言葉をご存知でしょうか?
活性酸素による酸化が「体のサビ」、と言われるのに対し、糖化は「体の焦げ」と呼ばれています。
こんがりと飴色になった北京ダックを頭に浮かべてみてください。
アヒルの肉に糖の液をかけてじっくり加熱したことで、皮はパリパリで香ばしくとても美味しそうですよね。
実はこれ、身近な糖化反応の一例です。
糖とタンパク質に熱が加わることで結びつき、見た目が褐色に変化することを「糖化」と言います。
これと同じ反応が人の体内で起きています。
糖化反応は健康面での影響はもちろん、美容面においても肌の弾力・ハリ、肌の色・ツヤなどに様々な影響をもたらします。
糖化とは??
体内で起きる糖化反応
食事で取り込まれた炭水化物(糖質)は血中のブドウ糖になります。
取り過ぎてしまうと急激に血糖が上がり、体はインスリンというホルモンを出して血糖を下げようとします。
このブドウ糖は体のエネルギーに必要なものですが過剰摂取により糖の処理が追いつかなくなります。
余った糖と組織や細胞を作るタンパク質は体温によって加温されることで結合し変性させ「AGEs」と呼ばれる糖化最終産物を作り出します。
この反応のことを『糖化反応』(メイラード反応)と言います。
AGEsが体に引き起こす影響
① 肌の弾力・ハリがなくなる
コラーゲン繊維は三重螺旋構造のバネ構造により弾力を維持しています。
しかしコラーゲンが糖化によってバネ構造がガチガチに固定されてしまうと、伸縮性や弾力性が失われます。
② 皮膚色の変化
AGEsは硬くて褐色なのが特徴ですが、タンパク質が褐色する変化は肌の透明感を失わせ肌のクスミ(黄グスミ)が進んでしまいます。
③ 動脈硬化の原因
悪玉コレステロール(LDL)は通常なら白血球のマクロファージが食べて分解してくれますが、LDLが糖化してAGEsが溜まった状態になるとマクロファージが食べても分解しきれずに“泡沫細胞”となり血管の内壁に蓄積します。これがアテロームを形成し動脈効果を招いてしまいます。
④ 組織の炎症
AGEは炎症を引き起こすサイトカインという物質を生み出します。
これにより組織は炎症を起こしやすい状態になってしまいます。
糖化が起き作られたAGEsは老化を促進させる他、糖化が進むと糖尿病や骨粗鬆症を引き起こす原因にもなります。
また、飲酒や喫煙、紫外線も糖化を促進させる要素となります。
糖化を防ぐには?
「血糖値スパイク」を防ぐ
食後に血糖値が正常範囲を超えて上昇する現象を『血糖値スパイク』(食後高血糖)といいます。
食後は誰でも血糖は上昇しますが、正常では140mg/dlを超えることはありません。
ところが、食後にそれ以上に血糖が上昇しそれが食事のたびに繰り返されるのです。これが「血糖値スパイク」です。
また、血糖値スパイクは食事の回数に大きく関係があり食事の回数が減れば減るほど、血糖値の急上昇率が大きくなっていきます。
1日3食(緑色)では血糖値のグラフがなだらかなのに対し、1日1食(青色)だと血糖値が急上昇していることが分かります。
この「血糖値スパイク」が続くと血管が傷つくことがわかっており、高血糖によって血管の中では大量の有害な活性酸素が発生します。
この活性酸素は細胞膜や細胞の遺伝子を傷つけます。
血管の機能を正常に維持している内皮細胞が活性酸素によって傷つけられると、傷ついた内皮細胞を修復するために免疫細胞が内皮細胞に入り込み、血管の壁が盛り上がり、これを繰り返すことで動脈硬化が進行します。また、血管の末端にある毛細血管を高血糖の血液が流れると流れが滞り組織は酸素や栄養が不足し、末端の臓器である目、腎臓、神経、肌、などのあらゆる臓器に影響をもたらします。そして高血糖により、多くて処理できなかった糖とタンパク質が結びつき、体温の作用で糖化産物ができることが問題です。
糖化は、初期の段階なら血糖が下がれば、正常なタンパク質に後戻りしますが、高い血糖が続けば後戻りができなくなり、この結果、終末糖化産物(AGE)ができます。この終末糖化産物(AGE)が肌に蓄積すると、肌の弾力性が低下して透明感のないくすんだ肌になります。
また、血管に蓄積すると動脈硬化が進行し、脳の中のタンパク質と糖が結びつくと認知症のリスクが高まるなど多大な影響をもたらすのです。
血糖値は血液の中の糖分の量を示す値です。血糖値は一般的な健康診断の検査項目にも入っていますが、これが一定値より高い状態が続くと「糖尿病」と診断されます。
健康診断では食事を食べずに検査を受けるため、血糖値スパイクをおこしていたとしても空腹時血糖が正常な人は見逃されていることが多く、本人は健康と思っていたのに気付かないうちに糖尿病やその予備軍になっている人が多く存在します。
この「血糖値スパイク」(食後高血糖)を予防するにはどうしたらいいのでしょうか。
糖化や血糖値スパイクを防ぐには?
①食事
(1)低GI値食品を選ぶ
・GI値とは血糖値の上昇する割合を数値化したもので、GI値の低い食品ほど血糖値が上がりにくく、GI値の高い食品ほど血糖値が上がりやすいことを意味しています。
GI値の低い食品ほど糖質の吸収が穏やかで太りにくいと言われており、できるだけ低GI値の食品を選ぶことが糖化の抑制にもつながります。
●低GI値⇨わかめ、もずく、ひじき、きのこ、こんぶ、葉物、大豆、枝豆、ナッツ、玄米、ライ麦パン、春雨、チェリー、プラム、もも、なし、ヨーグルトetc…
●高GI値⇨砂糖、食パン、じゃがいも、もち、白米、うどん、ドーナツ、せんべい、チョコ、かぼちゃ、人参etc…
(2)食事の回数
食事の回数が減れば減るほど、血糖値の急上昇率が大きくなっていきますので、1日3食食べることで血糖値の上昇をなだらかにします。
(3)食事の順番
・高GI値食品を全く取らない方が良いというわけではありません。GI値が高くても栄養価の高い食品はあります。主食のパンやご飯といった炭水化物を取る前に、野菜やキノコ類、肉類、魚類を食べるのがおすすめです。食物繊維を多く含む食材は血糖値の上昇を緩やかにします。飲み会などでどうしてもお酒を飲まなくてはいけない時、お酒を飲むまえに低GI値である枝豆を食べるなど、急激に血糖を上げない食品を取ると良いでしょう。
(4)食品の調理法
・調理法によっても糖化最終産物であるAGEsの量が変わります。
(AGEs小)生⇨蒸す⇨煮る⇨炒める⇨焼く⇨揚げる(AGEs大)
冒頭でもお話ししました北京ダックのように、食品加工の上では色付けや風味付けなど糖化反応は利用されていますが、こんがりとした焼き色は糖化によってAGEsが生成される原因となります。揚げ物などを食べる時レモンをかけると脂肪吸収を抑える働きがあるので、どうしても食べたい時にはレモンをかけて食べましょう。
② 運動の時間
・交感神経が活発な時間帯である夕方や、夕食後に運動をすると心拍数の増加と血流量の増加により体脂肪の燃焼率が活発になります。食事1時間以内は血糖値が上昇し糖化しやすい時間帯となるので食後すぐに横にならず、ウォーキングなどの有酸素運動をすると食後の血糖値上昇も抑えられます。
ウォーキングが難しい方は、食後スクワットや階段の昇降で下半身の筋肉を強化する簡単な運動を取り入れると良いでしょう。また運動の直後糖分が多い飲み物を取ると血糖値が上がってしまうので、運動後は糖分が少ないものを選びましょう。
運動は睡眠にも関係し、睡眠を取れている人はウォーキングなどの運動を習慣にしている人が多く7時間以上の睡眠を確保している人が多いそうです。
③ 睡眠
・AGEsが体内に溜まってしまう原因として睡眠不足も原因の一つとしてあげられます。
ある大学の研究によるとたった一晩の睡眠不足が細胞のダメージを受け老化を促進させる結果が出たとのこと。細胞のダメージは機能低下を引き起こし、基礎代謝も悪くなり糖の排出ができず体内に蓄積させてしまいます。
またOECD(経済協開発機構)の統計によると、1日の平均睡眠時間はアメリカ、イギリス、フランス、スペイン、中国などは8時間を超えるのに対し、日本や韓国は7時間と短い結果。寝つきが悪い方などは軽い運動を心掛け、寝る前にスマホやテレビなど長時間見ないなど良質な睡眠ができるよう心掛けてみましょう。
血糖値を下げるツボ
糖化防止には体内の糖、つまり血糖をうまくコントロールすることです。食事を取れば血糖値が高い状態になり、インスリンによって血糖値は下がっていきます。
このようにからだの中では食事をするたび血糖値の上がり、下がりを繰り返しているのです。
食後の血糖値が高い状態が続いたり、間食などをたくさん食べて何度も血糖値を上げると、体の中では糖とたんぱく質が結合して糖化反応が進んでしまいます。
そこで高血糖対策として、血糖値を下げると言われているツボをご紹介致します。
●腕骨・・小指の骨を手首の方になぞり、盛り上がりを超えた所の凹みで手のひらと、手の甲の中間にあります。糖の代謝を助け内分泌の働きを促すツボ
●地機・・すねの骨の内側を上にたどり止まる所から下に指4本分下にあります。胃腸の働きを整え消化・吸収をよくすることで血糖値を下げる働きがあると言われています。
ツボの位置はだいたい決まっていますが、体格や体の状態により少し変化します。
ツボの周辺でくぼんでいたり、張っていたり、冷たい、ザラザラするなどの違いがある場所がツボになります。
押すと心地良い良いと感じるポイントを探し、親指を使ってツボを押し刺激していきましょう。
鍼灸治療においてもこのような血糖値を下げると言われるツボや、全身の気の巡りを良くするツボなどを組み合わせて全身の治療を行っていきます。
体の糖化は顔の弾力・ハリの低下のよりシミ、シワの大きな原因にもなり、また動脈効果など重大な病気につながる可能性があります。良い食事・適度な運動・質の良い睡眠は糖化予防だけではなく、生活習慣病の予防にも繋がります。
美容は「健康な体」という土台があってこそ。
良いと言われることを100%毎日続けることは難しいですが、食事の順番や、運動がなかなかできない方は、エレベーターを使わず階段にしてみたり、睡眠時間が取れない方は睡眠の質を良くする工夫などできることから少しずつ意識し、こまめな抗糖化対策で老化を防止していきましょう。
グラン治療院
萩原 美穂
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私が書きました!
佐戸井 恭市KYOICHI SATOI
鍼灸師
所属:グラン治療院東京院
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